世界遺産 ”ドーセットと東デヴォンの海岸”
世界遺産のドーセットと東デヴォンの海岸は別名ジュラシック・コースト(Jurassic Coast)と呼ばれ、1億8500年前に形成された三畳紀・ジュラ紀・白亜紀の
地層が連続的に露出している海岸だ。東はスウォンジー(Swanage)から西のシドマス(Sidmouth)までの155kmの海岸線で、
アンモナイトや巨大な爬虫類の化石が多く出土し、過去300年亘って地質学的・古生物学的・地理形態学的な貢献があった。
2001年にユネスコにより自然世界遺産として登録された。
右の写真は体長2mの水棲爬虫類”イクチオサウルス”の化石(ウィキペディアより)
難しい学問のことは置いておいて、ネットで調べるとこの世界遺産の海岸線の美しい景色の写真が沢山見られる。
その中から自分勝手に”三大景色”を決めてこれから訊ねることにしよう。
チェジル・ビーチ Chesil Beach View Point
その一つ目はチェジル・ビーチだ。ドーセットのドーチェスターの南の海に突き出たポートランド島 (Isle of Portlans)から北西のウェスト・ベイ(Weat Bay)までの白い小石の海岸のことだ。この海岸は長さ28km、幅は最大200m、海面からの高度は平均11mだという。 その地質学的なことは理解できないが、小石の大きさが北西がえんどう豆ほどで、南東のポートランド付近ではオレンジの大きさになるのだという。
この海岸の中でも特にアボッツベリー(Abbotsbury)からポートランド島までの13kmに亘るフリート・ラグーン(Fleet Lagoon)の美しい光景に惹かれてやってきた。
アボッツベリーからの眺めはCountry Life magazineの投票で"Britain's third best view"に入ったというから見逃せない。
そのビューポイントはアボッツベリーからB3517を1.5kmほど西のアボッツベリー・ヒルを登る斜度17%の急坂の途中にあった。
雨もモンタキュートまでで今は晴れているのだが、もやっていて視界が良くない(写真右)。もう一つのビューポイントに期待しよう。
フリート・ラグーンはチェジル・ビーチの移動により出来上がった陸地との間の塩水の浅瀬で幅は広い所で900m、狭いところは65mの細長いものだ。
深さは2m程度らしい。今年のロンドンオリンピックではセーリング(ヨット)の会場となる。
この説明ではイメージしにくいとおっしゃる方は
"Google Map"をご覧いただこう。
ポートランド島 Isle of Portland
一つ目のビューポイントが空振ったので、2つめのチェジル・ビーチのビューポイントを目指す。
A354でポートランド港とフリート・ラグーンを繋ぐ水道の橋を渡り、チェジル・ビーチの上を1kmも走れば
ポートランド島だ。
ナビ子ちゃんは最短距離を指示してくれるから、途中からA354を離れ旧道に入り込んだ。「勘弁してよ」と言いたくなるシングルトラックの道路は、
ますます狭く、急勾配になってくる。登りきったところからしばらく走ると、ビューポイントの大きなパーキングに出た。
待望の景色だが、まだもやが晴れてはいない。それにここからだとこの時間は逆光となる(写真右)。写真にすると更に写りが悪いが、
左から右に湾曲する白いラインがチェジル・ビーチだ。美しい曲線がお分かりいただけると思う。中央右に半円の海が見える。
これがポートランド港、その上に三角形に見えるのがフリート・ラグーンだ。
この島の産業の一つがポートランド・ストーンだ。1日に訪れたゴディントン・ハウスのプールに使われていたり、今日訪れたキングストン・モールワードの
ハウスやテラスに使われていた石だ。上述のGoogle Mapの写真でも島のあちこちに白い部分が見られる。それが石切り場だ。
この島にも見るべきものは多いようだが、私達の今日の目的はチェジル・ビーチのビューポイントだったので次に向かうことにする。
ナビ子ちゃんは先ほど来た道を指示するが、無視してA354を走る。「再検索中」を繰り返し五月蝿い。お喋りなナビ子ちゃんだ。
丁度夕方のラッシュアワーに当たったようだ。ウェイマス(Wymouth)の街で渋滞に嵌る。車窓見学のウェイマスだが、コーストのリゾートらしく
エキゾチックな香りがする街だ。。
本当はそうしてのんびりしている暇はないのだ。まだこれから”三大景色”のうちの2つを訪れなければならないのだ。
ダードル・ドア Durdle Door
”三大景色”その2はダードル・ドアだ。ハイライトと言って良いだろう。
A353からA352に入り東進、右折してローカルロードをWinfrith Newburgh村を抜けて南下すると
Durdle Door Holiday Parkのオートキャンプ・サイトの先のパーキングに着く。
ペイアンドディスプレイをしてパスを下る。
パスは水溜りがあって歩きにくい。猛烈な風が海から吹いてきて寒く感じる。手を繋いでいないと妻は飛ばされそうだ。それでも行き交う人は多い。
こんな人込みはヒースロー以来かもしれない。「帰りが厳しいな」と思うくらい下ってようやく美しい湾が見下ろせる場所に出た(写真右)。
ダードル・ドアの東側の"Man O' War Cove"だ。お目当ては近い、つい急ぎ足になり、妻を置き去りにして苦情が出る。
突き出した岩の西側に回ると待望のダードル・ドアのアーチが見える。唯唯美しい。というしかない。海の浸食で軟らかい岩が削られ出来た
自然の石灰岩(Portland limestone)のアーチだ。ジュラシック・コーストで最も写真を撮られたランドマークといわれる。海岸まで下りられるが、その元気はない。
ダードル(Durdle)とは古英語で穴を意味する"thirl"に由来しているとのことだ。小説や映画の舞台としてしばしば登場しているのも頷ける。
少々移動した所でアングルは変わらないのだが、シャッターを押し続ける。風の強さをしばし忘れさせる衝撃的感動だ。
目を西の方向に転じれば白亜の断崖が見える(写真下右から2枚目)。
Bat's Head"という小さな岬だ。
拡大写真で赤い矢印の白い点のように見える部分も洞穴なのだ。長い自然の浸食により、いつかはダードル・ドアのような岩になるかもしれない。
悠久のロマンだ。
”行きは良い良い帰りは怖い”、斜面を上る。幸い風は追い風で幾分助かるが、冷たい。草むらを這って上る子供がいた。
どうしたのかと思ったら、父親が「本人はタイガーのつもりなんですよ」と説明してくれた。そういえば口を大きく開けて「ガォー」と言っている。
イギリスの野原は羊や犬の落し物が沢山あって余り綺麗だと思わないが、父親は助長するようにからかっている。
ラルワース・コーヴ Lulworth Cove
”三大景色”その3はラルワース・コーヴだ。
ダードル・ドアから東へ2kmのところにある小さな入り江だ。パーキングから海岸に下りる小道はすっかり観光化されているが、それはそれなりに楽しい。
レストラン、カフェ、土産物屋、パブ、B&B,インなどが並んでいる。茅葺屋根の家も見られる。
メイン・ロードを途中で逸れて牧草地に入る。海岸からではなく、崖の上からコーブを見下ろそうという訳だ。美しい弧を描く海岸線とコバルトブルーの入り江があった(写真右)。
しかし、崖っぷちからの撮影では私のカメラでは全体が入らない。かといって、下がれば崖が邪魔で入り江が隠れてしまうというジレンマだ。
この入り江の形成過程を簡単に説明するのは難しいが、簡単に言えばジュラシックコーストの海岸は海側に硬いPortland LimestoneとPurbeck Limestoneのラインがあり、
その内側に軟らかい粘土(Clays)とGreensandの帯がある。その内側にまた硬いChalkのラインがあるという構造なのだ。
そこに先ず、何かのきっかけでLimestoneに波の浸食により隙間が出来、次の軟らかいClaysとGreensandの帯が浸食されていく。
そして、Chalkのラインに達すると浸食は横に広がり次第に円形になっていくのだ。
およそ1万年掛かって現在の姿になったのだ。説明しているこちらも俄か勉強だから、おそらくお分かりいただけないだろう。
しかし、美しい風景であることはご理解いただけたことと思う。 (右の航空写真は上記HPより)
Address | Dorset and East Devon |
Telephone | - |
Web Site | Dorset and East Devon Coast |
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